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高校の現代文の教科書にもある江國香織の草之丞の話の記憶の残りやすさ

ひょんなことから江國香織さんの草之丞の話を目にした。すると一気に、あーあの話、あったあった、侍の子供だったってやつ、オレは幽霊の子だったのか、ってやつ。と鮮やかに思い出した。おいたわしゅうございます、の一言も思い浮かんだ。

どこで読んだかは思い出せないので調べると、高校の教科書に載ってるらしい。でも自分は最近、といってもここ10年ぐらいの間に読んだ記憶があるから、学生ではない。江國香織さんの本は確か、1、2冊もってたけど、と考えると、つめたいよるに、に収録されていたことが判明した。うっかり買おうと思ってたから気づけてよかった。【読書感想文】太宰治の猿ヶ島とスピッツのエスカルゴ

読み返すと思ってた以上に短いお話だ。

学校をさぼって電車に乗ってた13歳の少年はシングルマザーのお母さんが何やら膝に包をもって出かけるところに遭遇する。サボった身なので声もかけず、かといって気になるのでついていくと、おもむろに八百屋の前あたりで魚の干物みたいなのを地面におき、手を合わせる様子を目撃する。後日、お母さんが縁側で侍のたたずまいの男の人と話をしている、声をかけると、自分の父親だと紹介される。しかも正真正銘のさむらい、幽霊だという。あの世から女優の駆け出しの母の演技をみて、恋におち、下界にやってきた、そんな父親としばらく普通の家族の生活が始まる。侍の父親との生活に慣れたころ、幽霊は、あとのことは頼む、とかえってしまう。お母さんのことをよろしくたのむ、と13歳の少年は託される。

お母さんは天真爛漫と描写されるが、乙女のように侍の前で頬を赤らめる。そんな母と、あの世から気持ちひとつでやってきた不器用に笑う武骨な侍の父。自分のルーツを知らされた13歳の僕。そしてなんとなく予期していた別れ。母をたのむ、と言われた責任、一人前とみなされた自分。内容が絵本というか童話というか、ファンタジーなのだ。

言葉選びも記憶にのこりやすい。草之丞が惚れたきっかけの、おいたわしゅうございます、のセリフ、別れのシーンで繰り返される、行かないでください行かないでください。侍ならではのきっぱりとした言い切り。

最後のシーンは、草之丞の亡くなった場所に今でも命日に墓参りをする、と母との日常が続いていることで終わる。これはファンタジーと言ったが、同時に怪談でもある。いや、スピリチュアル、かな。おどろおどろしいものではなく、読み終えた読者の中に、あーそういう世界ってあるのかな、で、あったらいいな、と思わせる。草之丞、と聞いたとき、あーたしか、、、と記憶がよみがえった。何年も前に読んだ話だが、心のどこかに残っていたのだ。

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