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読書感想文「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」と日本人の多様性LGBTQ

ブレイディみかこさんは九州福岡県出身でアイルランド人の男性と結婚してイギリスのブライトンに一人息子と住んでいる。修猷館(しゅうゆうかん)高校出身。

なんでこの本が手元にあるかというと、これは息子が高校生の時に、現代文の先生から、面白いよ、ともらって帰ってきた本だからだ。かといってすぐに読んだわけではなく、数年たってからパラパラのめくったとき、作者紹介のところに上文があり、イギリスが舞台の話に惹かれた。若いときに一年住んでたことが今でも懐かしく思うのだ。さらに修猷館高校とは関西人の私にとって馴染みのある名前では無いが、長男が福岡で一人暮らしをしてた関係で、とっても賢い学校だと聞いたことがある。

読み始めるとすぐ、息子がしおりを入れていた場所にたどり着いた。ははぁ、ここでギブアップしたんだな、と可笑しくなった。ただ、半分ぐらいまで読んで、あぁ、これは息子には興味のない内容だろうとわかった。新潮文庫が、女性に売れた本第一位、と帯に入れているが、高校生男子が好んで読む内容とは思えない。まぁ、せっかく先生が勧めてくれたので試しに読んでみよう、としただけましだと思う。【読書感想文】角田光代の彼女のこんだて帖を高校の模試で知る

内容はおそらく実話と思われる。登場する息子さんは12歳ぐらいまでの話だから、ギリギリプライバシーでもめない年齢だと思う。これ以上年齢が上だと、なんで俺のプライベートをベラベラ喋るんだ、となると思う。

読後の感想は、

日本人は多様性を受け入れる準備がない

に尽きる。

現在日本では、多様性を受け入れよう、が急速に始まっている。LGBTQが叫ばれている。小学校の授業でも出てくるSDGsとおんなじ感じでやってきている。

https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/about/

SDGsは日本人だろうとアメリカ人だろうと、取り組む姿勢はそれほど変わらない気がするが、LGBTQは日本人にはハードルが高い。作中、日本人の著者さんと、アイルランド人の旦那さんの間に生まれた息子さんは、何度も自分のアイデンティティに直面する。これは我々ほとんどの日本人は体験しない。

日本には日本人しかいないから

これは「日本人の知らない日本語」にも出てきている、日本には日本人しかいないし日本語しか話されていない、のだ。海外からの人たちはまずこのことに驚く。どこの国だって、その国の人種だけでなくたくさんの人種が住んでいる。だけど日本の場合、全員が黒い髪で、黒い瞳を持ち、日本国籍で日本語を話し、そうでない人がいるとビックリするのだ。島国ということではイギリスも同じだが、移民がいない国日本は独自の文化を育ててきている。そこへ、

自分で誰かの靴を履いてみること、

を求められるのだから、おっかなビックリなのだ。誰かの靴を履く、というのはイギリスの定型句、To put yourself in someone’s shoes.であり、相手の気持ちになってみる、誰かの立場になってみる、ということを意味すると作中、教えてくれる。

相手の気持ちになってみる、ということは小さい頃から教えられることだ。嫌がらせされたら嫌でしょ?同じこと自分がされたらどんな気持ち?もしも自分が相手の立場だったら?という具合だ。ただ、それらが自分が今まで経験したことのないようなこと、さらにはおそらく一生経験しないような立場のことだともう、想像、それ自体が難しい。それがLGBTQと思われる。異質なものはお笑いの世界でしか存在しない、といってもよいぐらい私達は慣れていない。

出来れば同じ者同士でつるんでいたい

この気持ちが歪みを深める。理解する努力をしなくても分かり合える、というのはとても楽でとても落ち着く。子供達が成長して社会に出ていく過程で、自分とは違う人達と出会っていく、そうやって少しずつ自分の世界を広げていく。その時、自分を主張していけ、という考えがアメリカでもイギリスでもフランスでもあるが、日本ではそうはいかない。むしろ自分を殺す傾向にある。ざっと周りを見回して、あれ、自分は人と違うな、と感じたら、みんなはどう振る舞ってるかな、そっちに合わせましょう、と歩み寄っていく。空気を読む練習が知らず知らずのうちになされている。中学生ぐらいでこの環境が真逆だとその後苦労する。大人になってから、やっぱり周りに合わせる、もこれからは自分を主張する、もバランスが難しい。

誰かにとっての幸せが他の誰かにとっての不幸なら、それはあるべき姿じゃない。

妥協案を探す?お互いに歩み寄る?公平になってる?我慢してない?お互い離れる?何が正解?

その前段階として、

まずひとまず、知りましょう

が、日本の現状だ。我々は世界的にみて、こんな状態なんですよ、今まで普通だ、と思われてきた常識が実は日本だけでの常識なんですよ、そのこと知っていきましょう、それから先、どう変貌していくかは誰も想像出来てない。

このブレイディさん一家だけが特別な境遇にいるわけではない。たまたま、日本人が身をもって体験したことを、私達(体験する可能性の低い私達)に、ちょっと知っといたほうがいいよ、と教えてくれている。私達のほとんどは、日本人同士で結婚し日本に住むから、それ以外を知らないからだ。彼女は母である自分が教えるまでもなく、息子が考え、選び成長していく様をみて言う『さんざん手垢のついた言葉かもしれないが、未来は彼らの手の中にある。世の中が退行しているとか、世界がひどい方向に向かっているとか言うのは、たぶん彼らを見くびりすぎている』

読み終えたら自問自答する、彼はイエローでホワイトでちょっとブルーだったけど今はグリーン。じゃぁ私ってなに?

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